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『日本沈没』さいとう・プロ劇画・小松左京原作(講談社)☆☆☆☆☆



小松左京のSFシミュレーション小説を『ゴルゴ13』のさいとう・プロが劇画化。
火山の噴火や地震の発生、それは日本列島沈没の始まりだった。深海潜水艇のパイロット・小野寺は、それを予言した田所博士を中心とした「D計画」という政府のプロジェクトをすすめる。それは、1億2000万人の日本国民を、海外に脱出させるというものだ。前代未聞の状況、大量の難民の発生。政府は諸外国や国連に助けを求める。国連は日本救済特別委員会を開き、日本国民の救出を計る。
この物語は、偏狭な愛国心をもつ人にぜひ読んでもらいたい。日本にいる外国人に、冷たい目を向けている人は、このシミュレーションを読んで、頭を冷やすようにしてほしい。外国人敵視など、最低の行為だとわかるだろう。
個人が、自分だけで生きていると考えるのはオロカなこと。国も、自分の国だけで生きていると考えるは間違っていると、この劇画は教えてくれる。
他の国と仲良く生きていくことこそ、日本人の生きる道だと、あらためて思う。
2000年5月11日
『ヤマタイカ』星野之宣著(潮出版社)☆☆☆☆☆


日本人はどこから来てどこへ行くのか、日本人とはどんな存在なのか、日本人のナショナリズムとは? そんなテーマを盛り込んだ、星野之宣のSF漫画である。
沖縄の巫女の一人である伊耶輪神子(いざわみわこ)は、邪馬台国の女王卑弥呼から時空を超えて、オモイマツカネという銅鐸を送られる。超能力を得た神子は、高さ10m以上の超巨大銅鐸オモイカネを探しだし、パワーアップ。1億人の日本人の祭り“ヤマタイカ”のため、世界最大の戦艦・大和を台風のエネルギーで復活させる。祭りの依代(よりしろ)=御輿(みこし)=山車(だし)としての戦艦大和(の幽霊船)は、嘉手納基地を砲撃、アメリカの戦艦や原潜と戦う。神子は一般大衆の思念エネルギーを引き出し、大和を動かし続け、ヤマタイカの祭りを加速させる。
神子らは祭りに対抗する国家(鎮護国家をとなえる仏教の四天王、修験道の僧兵、治安出動した自衛隊等)と戦うことになる。
「火の民族」(縄文人)と侵略者「日の民族」(弥生人)との戦いが、巨大なスケールで描かれる。そこには邪馬台国や仏教関連の歴史学・考古学や、日本の火山・地震などの地学の話がふんだんに盛り込まれている。
空飛ぶ超巨大銅鐸、世界一巨大な幽霊船の戦艦大和、仏教の超能力者のようなSFな存在と、歴史学・地学等の学問や近代兵器などのような実際の存在との混じり合いに、読者は圧倒されるに違いない。
火山関連で、最近噴火した北海道の有珠山も出てくる。
2000年4月29日
『わたしの人形は良い人形 自選作品集』山岸凉子著(文春文庫ビジュアル版)☆☆☆☆☆



 「千引きの石(ちびきのいわ)」・「汐の声(しおのこえ)」・「ネジの叫び(ねじのさけび)」・ 「わたしの人形は良い人形」の4本収録。
 「千引きの石(ちびきのいわ)」戦前からある呪われた体育館に、引きずり込まれてしまうという、「学校の怪談」風の作品。学校というのは、体育館にしろ、校舎にしろ、誰かがいて当然の場所。これらの誰もいない、使われていない校舎等は、怪談の舞台になりやすい。
 「汐の声(しおのこえ)」幽霊屋敷を放映するために集まったテレビ局スタッフと霊能力者の話。 17歳の霊感少女が主人公で、彼女だけが本物の幽霊を感じることができた。 その恐怖の結末は・・・という話。ラスト近くに明らかになる物語の発端。 「アーノルド坊やは人気者」というテレビドラマに関する都市伝説があり、 作者はこの都市伝説をおおもとにしたのかもしれない。
 「ネジの叫び(ねじのさけび)」財産目的で、女に近づいた男が辿る悲劇。因果を感じさせる。
 「わたしの人形は良い人形」人形は呪うから怖い。昭和21年の交通事故の被害者と一緒に葬られるべき人形がたどる呪いの物語。現代まで続き、これからも呪い続けるという余韻を残すラスト。モノを中心とした物語は、森村誠一の小説で「剣」や「拳銃」をたどっていくという話があるという。
山岸凉子著作目録
2000年3月26日
『悪魔くん千年王国(全)』水木しげる(ちくま文庫)☆☆☆☆☆


現代に生まれた天才児・松下一郎(悪魔くん)が、悪魔を呼び出し、さまざまな使途を率いて、八仙人・サタン・スフィンクスといった権力者と闘う話。「世界がひとつになり、貧乏人や不幸のない世界をつくる」ことを目的として、ついには日本政府等の国家と闘うことになる。
この漫画について、呉智英氏の解説を読んだことがある。革命の物語とのことだったが、まさにそのとおりだった。理想に向かって一直線に突き進む悪魔くんは、「キリスト・シャカ・マルクス・悪魔くん」の一連の流れにある存在として描かれる。宗教団体の教祖みたいだ。
しかし、「金貨30枚でキリストを官憲にうったユダ」のような存在により3000万円で日本政府にうられてしまう。
「メシア(悪魔くん)はお金より地球の色をぬりかえるのにいそがしいのだ。おなじ色一色にぬりつぶそうという、あじけないお考えだよ。こんな考えは世の中のことがよくわからん少年が一度はかかる病気だよ」という、理想を押しつぶす大人(悪魔)のセリフもでてくる。子供(悪魔くん)と大人(悪魔)の違いをみせつけている。
しかし、理想を描かないのは、つまらない世の中だ。公害などの社会問題が噴出したころが舞台となっている漫画だが、この手の理想は追い続けたいところだ。
2000年3月3日
『夜叉御前 自選作品集』山岸凉子著(文春文庫ビジュアル版)☆☆☆☆☆

「時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)」 「キルケー」「鬼来迎(きらいごう)」「笛吹き童子」「海底より(おぞこより)」「夜叉御前(やしゃごぜん)」以上6作収録。
解説「愛天使(セラピム)のひと」は夢枕獏氏
今回も恐い話が並んだ。 「時じくの香の木の実」自分が幽霊になっているとは気付いていない話。 「鬼来迎」「夜叉御前」自分が狂っているとは気付いていない話。家族のせいでおかしくなるパターン。 平家物語に材をとった「海底より」も恐い。
山岸凉子著作目録
99年11月1日
『天人唐草 自選作品集』山岸凉子著(文春文庫ビジュアル版)☆☆☆☆☆

「天人唐草(てんにんからくさ)」「ハーピー」 「狐女(きつねじょ)」「籠の中の鳥」「夏の寓話」 以上5作収録。
解説「失われた子どもたちの記」は中島らも氏。
昭和58年『日出処の天子』で第7回講談社漫画賞を受賞した少女漫画の 山岸凉子氏の漫画の自選作品集。 恐い話が並んだ。 人はどのように狂っていくのかを描いた話が衝撃的だ。 少女が狂っていく「天人唐草」、家族のせいでおかしくなる話。 少年が狂っていく「ハーピー」、日本の受験システムは人を狂わせることがありうる。 山岸氏には『メタモルフォシス伝』という、受験そのものをあつかった作品もある。 原爆に材をとった「夏の寓話」。少女が火だるまになる絵に驚かされた。
関連リンク: 『日出処の天子(ひいづるところのてんし)』山岸凉子著
山岸凉子著作目録
99年11月1日
「バビル2世」横山光輝著(秋田書店)☆☆☆☆☆
超能力という言葉は広く知られているが、私のイメージを形作ったのはこの漫画であり、テレビアニメであった。
宇宙人の子孫である主人公の少年バビル2世と、同じく子孫であるヨミと、超能力を使って戦いを繰り広げる。
宇宙人の超能力が、時代を超えて遺伝していくという設定に、科学的な思いをもった。世界征服をたくらむヨミの野望も、各国の指導者を偽物に変えてしまうという作戦など、リアルな物語であった。
最終回、原子力潜水艦から奪った原子炉の破壊をやめさせたヨミは、やたらと核兵器を作り続けたり、核実験を繰り返したりする現実の世界の指導者よりも、指導者の器がある。
最近、OVA(オリジナルビデオアニメ)として復活した「ジャイアントロボ」には、その原作者である横山光輝の漫画のキャラクターが大量に出てくるが、正義の超能力少年バビル2世は、悪役だった。
中学生ぐらいの少年が純粋であるというのは、大昔の話ということか。
ジャイアントロボを操る草間大作君(小学生?)ぐらいにならないと、正義の主人公は行えないようだ。
99年05月26日
「その名は101」横山光輝著(秋田書店)☆☆☆☆☆
「バビル2世」の続編。バビル2世の血液を輸血されて、超能力者となった人間とバビル2世が戦う。
遺伝だけでなく、輸血でも超能力者になれるというのは、科学的だと思った。
OVAのジャイアントロボで、主役級だった銀麗は、この漫画に出てくる。
99年05月26日


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