同系統の本(徳間書店・対談集)
1992.9.『どうする日本、どこへ行く日本人』(徳間書店)
1993.9.30『日本人の死角』(徳間書店)この本
1995.3.31『日本人への毒薬』(徳間書店)
1996.5.31『佐高信の異論武装』(徳間書店)
1996.9.15『佐高信の反対尋問』佐高信対談集(徳間文庫)


1993.9.30『日本人の死角(対談集)』佐高信著(徳間書店) 紀伊國屋 amazon

この本は対談集です。対談出席者と目次です。

robo 1993.9.30『日本人の死角(対談集)』佐高信著(徳間書店)


第1話 いまこそ批評に毒を盛れ 高橋春男 
高橋春男著作目録
 批評に禁じ手は「あり」?
 政治家はそれなりに顔で性格がわかる?
 今まで築き上げたものを、笑いは一瞬にして壊す
 本人に会うと批評の鉾先が鈍る
 三十歳過ぎから女性である という哲学
 批評の毒は性欲から? フラストレーションから?

第2話 金融モラル確立が「日本浮上」の鍵 P.タスカ
ピーター・タスカ著作目録  
 常に新しいブランドを必要とする日本
 企業はみなファイナンスで株式中毒になった
 「ミスをしたら責任を取る」原則の無視
 モラルハザードこそ、経済立て直しの手がかり
 日本の「システム成り立ちの時代」は終わった

第3話 ノンフィクションの「事実をみる眼」とは何か 柳田邦男
柳田邦男著作目録
 現代日本人の「生と死」
 宗教を前提にしない「よりよき生と死」
 「事実による物語」のはじまりに向かって
 人間の真実に迫るそれぞれの手法
 アンフェアーな取材ということ

第4話 「私は政治改革のモルモット」 小池百合子
小池百合子著作目録
 既成の政党を崩すことができるならば…
 まずはじめに既成政党の否定ありき…
 党議拘束を解くことが何よりも早道
 冷戦構造も終わり選択肢が変わった
 高齢化社会も女性の負担が増える

第5話 「社富員貧」の会社本位主義を叱る 奥村宏
奥村宏著作目録
 指名解雇する経営者は経営者失格
 日本は“会社大国の経営者小国”
 自ら批判の目を持つということ
 経営者は公選にすべし
 外部批判が有効性を持つシステム作りを
 兜町に刑務所を設置せよ
 「脱社独往」で行く勇気を持つ

第6話 目覚めよ!ジャーナリズム 久野収
久野収著作目録  
 “十歳人間”の時代がやってきた!
 ジャーナリズムは現場から頭脳へ昇っていく知識
 幸福を求めると不幸になるパラドックス
 平等のコミュニケーションをどう作り出すか
 ジャーナリズムとアカデミズムの対立
 テレビのコミュニケーションとは?
 悪貨が良貨を駆逐しないための方策はあるか

第7話 相撲は“異界”からのメッセージ 杉浦日向子
杉浦日向子著作目録
 相撲はスポーツではない、伝統芸能です
 力士に国民栄誉賞はいらない
 「道」を求める相撲なんてつまらない
 平均点が支える国、日本
 強くてモロいのが力士の魅力
 貴ノ花はまだ男じゃない
 無駄が文化を育む
 金髪外国人力士を待望、切望する

第8話 闘う批評とは何か―文学と憲法のはざまで 江藤淳
江藤淳著作目録(エトウジュン)  
 相手の急所を突く批判とは何か?
 助け起こす批判か、殺す批判か?
 生き急いだ三島由紀夫と太宰治の生き方について
 文芸時評の延長としての日本国憲法批判
 戦後、日本の何が変わったのか?

第9話 人生は博打。0勝10敗だっていいじゃない 吉永みち子
吉永みち子著作目録
 居場所がなくて墓地に通った学生時代
 群衆の中の孤独を駆け抜けていくと…
 十五・十六・十七と、私の人生暗かった
 明日に向かって競馬をする
 競馬場での正しい服装とは?
 競馬場では誰何(すいか)されない
 闇の温かさ、光の酷薄さ

第10話 反制度を笑いで描く“有毒”筒井式小説作法 筒井康隆
PHP人名事典amazon「筒井康隆」
 批判の毒は誰に盛るか
 小説そのものが反制度
 抗議の受け流し方について
 雑誌は面白ければよい
 “バブル”が崩壊して借金が残った
 不況時に小説が売れるという言い伝え
 小説を書けば必ず誰かが傷つく
 封建的なロマンへの憧れ

第11話 堕ちたジャーナリズムが日本を滅ぼす 本多勝一
PHP人名事典amazon「本多勝一」
 奴隷になりたがる人間は個人か
 だからヒトラーは可能なんだ
 日本はタブーだらけの利権国家
 マスコミは情報を売るデパートだ
 本物は本物、偽物は偽物

あとがき


1 高橋春男
2 P.タスカ
3 柳田邦男 PHP人名事典
4 小池百合子
5 奥村宏
6 久野収
7 杉浦日向子 PHP人名事典
8 江藤淳 PHP人名事典
9 吉永みち子
10 筒井康隆 PHP人名事典
11 本多勝一 PHP人名事典

(uwasano)
高橋春男氏との対談は、佐高氏の下品な発言が面白い。 また、話題にされたソニーの盛田氏のインタビュー「盛田昭夫の親ばか世襲の弁明」が掲載されているのは次の本である→ 1992.2.20『日本に異議あり』
盛田昭夫著作目録

柳田邦男氏との対談で話題となった「同時代ノンフィクション選集」は こちら、「現代を読む 100冊のノンフィクション」は こちらです。

久野収氏はp130「宗教は脱世間であって、世間での本当の指針にはなりにくいと思っていますがね」という。「哲学」ということになるか。生きにくい現実社会をどう生きるか。石川好氏はフィロソフィーを「哲学」と和訳せず、「生き方」と和訳せよと言っていたが、今の日本は「死に方」が話題となっている。「死に方」の本『完全自殺マニュアル』とか。本当は『人格改造マニュアル』とかのほうをもっとクローズアップしてほしい。
石川好著作目録

江藤淳氏はp189「安岡(安岡正篤氏)先生の弟子だとひとこと言うと、右翼が狙わないのだそうです」と言う。安岡氏のことは KKニッポン就職事情(講談社文庫) 等に出てくるが、企業社会に必要なものなのか? というニュアンスだった。政界・官界・財界で強い影響力をもつということだが、江藤氏のニュアンスだとそれほどでもないという感じだ。

本多勝一氏との対談は、本多氏に手紙を送ってくる人の話が面白かった。本多氏のいた朝日新聞社ではない別の新聞社に、本多勝一様宛てで手紙を送って来るという。ホラーみたいだ。宮部みゆき氏の小説『龍は眠る』で白紙の手紙が新聞記者あてに届くような話があり(後に「恨」の一文字が書いてあったりした)そんな話を思い出した。
それから、日本ではモノカキを神格化するという話も面白かった。全肯定と全否定のどちらかしかないという。これは、本多勝一氏のファンを「本勝教信者」と呼ばれるのを聴くと、ありうる話だと思った。最近は、司馬遼太郎氏を批判した本 『司馬遼太郎と藤沢周平』を佐高氏が出した後、司馬ファンからの抗議のかなりあったという。 司馬氏を全肯定するというファンが多いというわけだ。部分肯定や部分否定が大切だ。完全無欠の人間などいないだろう。作家に限らず、タレント文化人や宗教家の神格化は危険だと思う。(そういう私も佐高氏を神格化してたりして)


1999年10月



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